BORDERLESS佐渡「ふるさとオーナーズ」の第一弾として準備中の「金の熟成酒プロジェクト」。今回、3年をかけて熟成酒を製造していただくのは、佐渡の地酒として人気が高い「金鶴」をつくる酒蔵、加藤酒造店。(創業1915年)
加藤酒造店が酒造りにおいてどんなことを大切にしているのか。
初の取り組みとなる「熟成酒づくり」に、どのような思いで取り組まれるのか。
「金の熟成酒プロジェクト」に賛同いただき、製造部門の担当者として参画いただくことになった専務取締役・加藤一郎さんにお話しをうかがいました。
加藤 一郎 KATO ICHIRO
有限会社加藤酒造店 専務取締役
1984年佐渡市出身。4人兄弟の長男として生まれる。高校卒業後は埼玉県の大学へ進学。その後、大手食品メーカーへ就職し、営業やマーケティング業務を担当。2015年に佐渡へUターンし、家業の酒蔵・加藤酒造店に入り現在に至る。4代目社長の父・加藤健さんをはじめ従業員の皆さんとともに、佐渡の地酒蔵として愛される酒造りにこだわり全国へ届けている。
趣味:釣り、シーカヤック
——佐渡には5つの酒蔵がありますが、加藤酒造店の日本酒造りへのこだわりを教えてください。
加藤さん:うちの酒の唯一無二のところは「全量佐渡産米」というところです。すべての酒を佐渡産のお米で作っています。
——佐渡のお米にはどんな特徴があるのですか?
加藤さん:佐渡は生物の多様性を大事にする島です。田んぼには極力農薬や肥料を使わないようにしていて、そういった田んぼには生き物がたくさんいます。それが佐渡のシンボルでもある朱鷺の餌場として活用されています。酒造りにとっては品質の高いお米ができます。
——極力農薬や肥料を使わない米作りは、大変なのではないですか?
加藤さん:そうですね。極力農薬や肥料を使わないということは酒米の収量は多く見込めません。しかし、生物多様性を育む米作りに共感してくれる熱心な契約農家さんたちがいらっしゃいます。
もちろん肥料をじゃんじゃん与えれば、たくさんお米を収穫できますし、粒が大きな米ができます。しかし、どうしてもお米のタンパク質が増えます。お酒にとってタンパク質は多くありすぎると良くないのです。
農家さんにとっては難しい米づくりですが、とても努力していただいています。一切農薬や肥料を使わない「自然栽培」に取り組まれる農家さんも増えてきました。
——「自然栽培」のお米作りもされているとは驚きました。どんなお酒になるのですか?
加藤さん:純米大吟醸「上弦の月」というお酒が自然栽培の酒米「越淡麗」を使っている酒です。収穫量が限られているので、発売前にある程度酒屋さんの割り当てが決まってしまいます。
それと無農薬栽培の「たかね錦」でつくる酒は「純米 拓(ひらく)」です。大変な米づくりですが、こういった方法を切り拓いていこうということで「拓」と名付けられました。
最近は自然栽培や無農薬栽培をしたいという農家さんが増えてきました。「生物多様性を育む米作り」に共感いただき、そういった心意気でやってくれる農家さんといっしょに酒造りをしています。
佐渡の自然を育む米作りをされる農家さんのお米でお酒をつくることは、地酒蔵としての覚悟だと思ってやっていますし、そういったところが「ウチらしさ」といえると思います。
——加藤一郎さんの経歴をお聞かせください。もともと酒蔵の家業を継ぐつもりだったのですか?
加藤さん:高校までは佐渡にいまして、関東の大学へ進学しました。その時点では、酒蔵を継ぐことを決めていたわけではなく、選択肢の一つという感じ。酒蔵に限定せず、逆に一般企業への道を進むことも決めず、ニュートラルな状態で佐渡を出ました。
——お父様(加藤健社長)からは、継いで欲しいという話はありませんでしたか?
加藤さん:とくにありませんでしたね。「他人の釜の飯を食ってこい」という事も言っていましたし、父は昔から「後を継げ」という感じではなかったです。「好きなことをやってくれていいけれど、継いでくれたら嬉しいな・・・」というくらいのスタンスでしたね。
——後を継ごうと思ったのはいつ頃だったのですか?きっかけはあったのですか?
加藤さん:新潟にはたくさん良いお酒がありますが、佐渡という離島でお酒をつくって、それが都市部や世界で勝負できるのは面白そうだなと思ったのです。
きっかけとなるような特別なイベントがあったわけではありませんが、佐渡以外の場所でうちの酒が飲まれているシーンをみることがあって、それが誇らしく感じました。
そうしているうちに、心の中にあった酒蔵を継ぐという選択肢がだんだん大きくなっていきました。
——それでお父様にお話しされたのですね?どんな反応でしたか?
加藤さん:20歳になって佐渡に帰省したとき、父に話しました。
「大学を卒業したら、別の会社に入って社会人経験を積みたいけれど、30歳くらいを目途に帰ってきてうちの酒蔵をやらせてもらいたい」と伝えました。
その時の父の反応ですか?「…そうか」という感じでしたよ。笑
——どのように会社を選んで、お仕事に就かれたのですか?
加藤さん:食品メーカーに絞って就職活動をしてきました。いろいろ見ていく中で「ネスレ日本」という会社とご縁があって入社しました。
ネスレ日本はブランドを大事にする会社でした。(加藤酒造店とは)会社の規模は違えど、いずれ役に立つのではないかなと思いました。大きい会社でしたので、社会人としての基礎的なマナー、マーケティング的な考え方などが学べました。
——食品メーカーでのマーケティングを学んできたという事ですが、加藤酒造店のお酒の販売方法についてはどんなお考えなのですか?
加藤さん:販売やマーケティングについては私がやっています。・・・といっても、何もしていないですけどね(笑)
この業界に入ってあらためて思ったのですが、うちのような小さな酒蔵は商業的になり過ぎない方がいいなと。あまり狙わずに、自然体でやっています。
加藤さん:全国約40件の特約店に置いてもらっています。北は北海道から、南は宮崎までですね。量販店へは卸していません。
うちは販路を広げることには昔から興味が無くて、価値観を共有できる酒屋さんに絞って置いていただいています。
——価値観を共有できる酒屋さんですか。特約店の酒屋さんをどんどん増やしていくのではないのですね?
加藤さん:はい。最近はお酒の取り扱いについて軽くなってきているところあると思うのですが、昔から「蔵元と酒屋が取引するのは結婚するようなもの」と言われていて、お互いが良いときも悪いときも寄り添って、遠慮なく意見をぶつけ合えるような関係でいないといけないと考えています。
そういう酒屋さんとは私が子どものころからの家族ぐるみの付き合いのところもあって、まさに結婚するくらいの思いで永いお付き合いさせていただいています。
——量販店が増える反面、酒販店さんが徐々に減ってきているかと思うのですが、それに対する焦りのようなものはありませんか?
加藤さん:焦りはないといったら嘘になりますけれど(笑)それも逆に差別化ができていいのかなと。「加藤酒造店の『金鶴』は量販店にはおいていないけれど、この酒屋さんに行けばある」となればいいなと。
それと酒屋さんはその地域の名士だったりして、その地域のことをよく知っていることが多いのです。酒屋さんに足を運んでお酒を買うということはひとつのカルチャーで、その地域の世間話をしたりしてコミュニケーションを楽しむ。酒屋さんにはそういった存在価値があると思っています。
——今回、加藤酒造店として初の熟成酒をつくることになった経緯についてお聞かせください。
加藤さん:相川の「熱燗小僧の会」というお酒好きが集まってお酒を楽しむ会があるのですが、そこでみなさんから「金鶴の熟成酒を呑んでみたい」というお話が上がったのがきっかけです。最初のうちは、はぐらかしていたのですけれど(笑)
うちのお酒は基本的なコンセプトが「フレッシュなお酒」なんですが、わるい熟成をすると「ひねる」と言われるフレッシュさに欠ける味になってしまうのです。普段は「ひねた酒」にならないよう、細心の注意を払っています。
ただし熟成となると「ひねる」リスクが高まるので、うちはやめておこうかなと思っていました。
けれど「熱燗小僧の会」に参加して、いろいろな熟成酒を呑んでいるうちに、洗脳……じゃないですけれど(笑)、「ひねる」を通り越した先のおいしく感じる熟成酒に何度か出会ってきたのです。これはお酒のひとつのカタチとして面白いなと思い始めてきました。
そんなときにBORDERLESS佐渡「ふるさとオーナーズ」と「相川車座」の岩崎さん(アキさん)から、「相川のまちと一緒につくる熟成酒」という提案をいただいて、うちも実験的な部分はあるのですが、やってみようかなと思いました。
——相川のまちには特別な思いがあるのですか?
加藤さん:相川には魅力的な飲み屋さんが多いです。そして、うちの酒の消費量が佐渡の中でも特に多い地域でもあるのです。そんな相川のまちとの関わりを深めたいなという思いがありました。それで今回の熟成酒で関われたらなと。
——加藤酒造店初の熟成酒、とても楽しみです!具体的にどんなイメージでつくられますか?
加藤さん:杜氏の坂下が設計しているのですが、ある程度味わい深さある線が太い酒でいきたいと思っています。掛米(かけまい)に関しては、精米歩合を削りすぎないようにして、麹を強くするようにつくろうと思っています。
口に含んだときの「含み香(ふくみか)」を味わえるような、いわゆる「ごくみ」のある酒になるようにしたいです。
——今回、熟成酒のオーナーとして参加される人、参加を考えている人に対してメッセージをお願いします。
加藤さん:うちとしても初めての試みとなります。どんな風になるかまだ分かりませんが、みなさんと経過を楽しみながらつくっていきたいです。
感想なども忌憚なく聞かせていただきながら、一緒につくりあげていく熟成酒にしたいと思っています。
佐渡の地酒として永く愛される日本酒をつくる加藤酒造店。量産や派手な宣伝は行わず、全量佐渡産米にこだわり、ひたすら良い酒造りに力を注ぐ「質実な佐渡の地酒」が加藤酒造店の目指すかたち。
今回インタビューさせていただいた加藤一郎さんは、酒づくりを通して佐渡においしいお酒があるという「佐渡の誇り」をつくりたいともお話されていました。
いよいよ12月中旬より仕込みが開始される熟成酒。これからの加藤酒造店と「金の熟成酒プロジェクト」に引き続き注目していきます。
(インタビュアー・記事制作 中林憲司)
★3月31日 クラウドファンディング開始!
佐渡相川「金の熟成酒」オーナー募集
~世界遺産登録 みんなの熟成酒で乾杯しよう!~
佐渡相川のまちづくり会社「相川車座」と、佐渡の地酒「金鶴」を製造販売する有限会社加藤酒造店、そして佐渡相川のファンづくりを推進しているBORDERLESS佐渡がタッグを組み、佐渡相川とつながって3年間の熟成期間をお楽しみいただく企画「金の熟成酒プロジェクト」を、クラウドファンディング「CAMPFIRE」にて2022年3月31日より開始いたします。
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日本最大の金山のまち佐渡相川を再び活気づけたい!オール佐渡産の熟成酒オーナー募集
応援のほど、よろしくお願いします!
■主催:金の熟成酒「車座」製作委員会 ■製造・販売:有限会社加藤酒造店
■協力:相川車座、BORDERLESS佐渡、伊藤酒店、北村酒店、北沢窯、OKESA BAR BUNZO、東雲、EDOPON、中林憲司
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